テールウインドでの着陸技法ではWind Gradientという重要な自然現象を解説しました。
しかし、ホントかなぁ?と思われる方も多いと思います。
実は私も若干違和感を感じていました。
それは着陸の経験に照らし合わせて、上空(例えば200フィート)の風が強いとき、地面近くで風がそれほど減らずに接地する場合があったことに由来します。
もちろん、急に減る場合もあり、これらはフレアの最中に体感として感じるのです。
つまり、Wind Gradientが存在する場合と存在しない場合があるのでは?というのが私が抱いていた仮説でした。
そこで、このホームページのモットー、データサイエンスの力を借りることにしました。
とは言っても単に折れ線グラフなのですが、数十例の実機で取得した風速がベースになっているという点がミソです。
何はともあれグラフをご覧下さい。
これは出雲空港RWY25で着陸した際に記録された電波高度計に対する風速のグラフで、
一本が一回の着陸で観測された値です。
上図を見ると30フィート近くから急に減っている場合と、あまり変わっていない場合がります。
さすがに上空で20ktを越えている場合は地面近くでは減りますが、上空が10kt~20ktの風速の場合は全く減っていない場合があります。
これは乱流が発生しているか否かによって変わるようです。
つまり乱流が発生していると風速はあまり変化しないようでして、私が抱いていた考えは仮説でもなく、定説だったようです。
乱流はパイロットの大敵なのですが、この時は僅かながら味方に回るようです。
さて、上のグラフは風のベクトルの長さそのままを示しています。
少しわかりにくいのですが、例えば真横から20ktの風もそのまま示しています。
簡単に考えると真横からの風20ktの滑走路に対しての正面成分はゼロなので、グラフは正面風成分を横軸にとって示すべきかもしれません。しかし本来のWind Gradientの特性を良く示すことが出来なくなってしまうので、このような形にしました。
さて、興味がある方はこのように思われるかもしれません。
「さっきのグラフは出雲空港のならでは特性なのでは?」
そこで福岡空港RWY16のグラフも用意しました。
福岡空港はデータが多いので、スレッシュホールドでの風速が正面から10kt以上であったときの事例をグラフ化しました。
グラフには色がつけられており、スレッシュホールドでの風速の滑走路に対しての正面風成分に対して虹色に変化させています。黒は正面風成分が10kt未満です。(黄色が見にくくてすみません)
いかがでしょうか?
このような観測値はなかなか見ることが出来ずもどかしかったのですが、いざグラフ化を行うと色々なヒントが生まれてきます。
これがデータサイエンス(初歩中の初歩ですが)の醍醐味と言えるかもしれません。
勉強ネタを最後に記しましょう
私がこの話に出雲空港を選んだ理由をいくつかあげてみてください。
ヒントはGoogle Earthの画像にあります。
今回の話と、乱流が発生している翼面の境界層の関連性を述べてみてください。
Wind Gradientが顕著であるか、そうでないかは現段階では着陸をしてみないとわかりません。この現状をふまえて、顕著である場合の理想的なフレア操作と顕著でない場合の操作を述べてください。
Wind Addtiveを多めに足して、実際はWind Gradientがそれほど多くなかった場合、着陸距離はどのような傾向になるのか、フレア操作をそのようにすればいいのかを述べてください。
Wind Gradientの有無をどのようにして感じとっているのかを述べてください。