航空機運航とデータサイエンス 副操縦士の接地点の分布は?

 副操縦士の接地点の分布を紹介しましょう。
舞台は富士山静岡空港。私と一緒に乗務して、副操縦士が操縦を行った時の接地点の傾向が今回のテーマです。
最初にお断りいたしますが、副操縦士が着陸することはよくあります。
もしその機会が無いと、副操縦士は着陸の経験を積むことが出来ずに永遠に機長になる事が出来ません。どの世界でも見習いの方が先生の代わりに仕事をこなすことがあります。これと同じですね。
また、副操縦士が着陸するときは、気象条件などが穏やかな日であるという制限が各エアラインによって決められていますのでご安心ください。

それでは早速グラフを見てみましょう。

 副操縦士の接地点の分布は薄い青で示しました。
前回の投稿では外れ値をカットすれば正規分布になるかもしれないということを紹介しましたが、副操縦士の傾向はいかがでしょうか?

 サンプルの数が少なくてはっきりとは言えませんが、筆者の山の形とは少し違うような気もします。
山が2つあるように見えますね。

 ここからは航空機運航の観点からの主観的な話です。
副操縦士が常に理想的な着陸をしてくれることは期待できません。
着陸はかなり難しい操作であります。
経験の浅い彼らが難しい操作を行った末の接地点を観察すると、ショート気味の時とロング気味の時に大別されるような気がします。それが上図の2つの山になって現れていると推測しています。

 次にデータサイエンスの観点での話です。
経験年数から赤は教師データであると考えられます。
青のデータ数はかなり少ないので、今後他の空港の傾向なども調べて傾向を特定しようと思います。
両者の分布が違うということは容易に結論づけられそうな気がします。
また、どうして2つの山に分かれたのかという点は、その時の気象条件などと照らし合わせることによって判明するかもしれません。
 全般的なお話しですが、グラフの横軸を目的変数にして、様々な気象条件を説明変数にして回帰分析を行う事も可能です。
これによって有意義な結果が得られたら紹介したいと思っております。

 最後に共通の話題です。
接地点が大幅に延びてしまうと、特に雪氷滑走路ではオーバーランの危険性が高まります。
過去にも痛ましい事例があり、エアラインの安全対策も必ずこの点に対して行われています。
グラフの右端は、望ましくない「外れ値」であると思いますが、富士山静岡空港の滑走路長を鑑みると「大外し」ではないと思います。
しかし、こういう着陸が少なければ少ないほど理想であります。
今後、自分のデータの範囲内ではありますが、なぜこうなったのかを調べてみたいと思っております。
 

 安全対策はかなり難しい要素を持っていますが、データサイエンスの手を借りて科学的に航空機運航の不安全要素を調査することにより、少しでもお役に立ちたいと考えております。