ここでPAPIとエイミングポイント、ILSのグライドスロープ、タッチダウンポイント(接地点)の関係について解説しましょう。これらの関係を正しく理解することによって、アプリ「PAPI」そして本物のPAPIを存分に活用することができます。
最初に接地点の重要さについて説明いたしましょう。
パイロットは限られた範囲内に着陸しようとするために、ある地点を中心に接地しようと努力をしております。
そこで、ある範囲内とはどれくらいでしょうか?
FUK16のGoogle Earthの衛星写真が物語っています。
写真は左から右に着陸していますが、滑走路上に接地した際のタイヤ痕が黒く残っています。この黒い跡の範囲が上記の範囲であると言えます。
そして最も濃い範囲は写真から見ると白い大きな四角から始まって、右に2つめの線までの範囲のようです。このように捉えますと、FUK16ではおおよそ白い大きな四角から1つめの線の地点に接地するように着陸している事がわかります。
この接地点の正確なばらつき具合は、
「航空機運航とデータサイエンス 航空機の接地点の分布は正規分布?」
で紹介しましたので興味がある方は参照してください。
では、飛行機の着陸は直前まで、接地点をめがけてまっしぐらに飛行するものでしょうか?
旅客機においてはNOです。
仮に接地点をめがけて飛行し、そこに着陸する事を仮定しますと、まるで空母に降りる艦載機のような激しい着陸になってしまいます。
従って旅客機では、その地点より手前をめがけて約30フィートの高度まで飛行し、それからフレア操作というもので降下率を少なくして、ふわっと降ります。鳥も同じですね。
その手前の点をここではエイミングポイントと呼びます。
次にグライドスロープについて説明しましょう。
これはILSを構成する電波施設で、望ましい3°のパスからの高度情報をパイロットに教えてくれるものです。
これを飛行機が正確に追いかけていきますと、空港に接地されているグライドスロープアンテナの横にたどり着きます。(正確には異なりますが説明のため簡略化しました)
最後にPAPIですが、これを飛行機が正確に追いかけていきますとPAPIが接地されている地点の横にたどり着きます。
この3つの関係を山形空港を例にとって示したものが下図です。
いきなり山形空港に話が飛んだ理由は、X-Planeで解説を行うに当たって、この空港が最適であるのが理由です。私が所持しているX-Planeの空港において山形空港以外の空港では、接地帯標識が現実と異なっているのが大きな理由です。この点は後に書きましょう。
緑の矢印はPAPIの位置、
緑の●はPAPIをたどると行き着く地点、
青の矢印はグライドスロープの位置、●はグライドスロープをたどると行き着く地点、
オレンジの●は一般的なエイミングポイントです。
この3つが一致していれば悩むことはないのですが、そうでは無いのが現実です。
なぜ一致していないのか?
実はこの説明には骨が折れますが、簡単に考えてみましょう。
最初にオレンジのエイミングポイントです。
この地点は実はパイロットの接地点とフレアに対する考え方によって一定ではありません。
つまりどこまでの範囲内に接地したいのか、フレアによって接地点がどれだけ延びるのか、等により前後にズレることがあります。
しかしながら多くのパイロットは上図の地点をエイミングポイントにしていると想像します。
それは上図の大きい四角のマーキングが目立っているので狙いやすいというのがその一つの理由です。
さて、接地点の範囲ですが、山形空港のような2500m滑走路の場合、接地点標識は滑走路末端から2000フィートで終わっています。
通常このような空港の場合、滑走路末端から2000フィートまでの接地点標識の範囲内で接地しようと努力します。
もし、緑の丸:PAPIの横を狙ってフレアをすると、2000フィートを越えて接地してしまう事が時々起こります。
そのために、オレンジの丸を狙うのです。
さて、青い丸との関係を見てみましょう。
これはILSのグライドスロープを追いかけると最終的に行き着く先ですが、緑の丸とオレンジの丸とも異なります。
これは様々な設定上の制限から決められているもので、詳細は省きますがとても視界が悪いときにILSに追従して飛行すると自然と辿るパスと考えて良いでしょう。
このように3つの位置は異なっているのが普通です。
次からは3つの整合性の背景、考え方に深く迫ってゆきます。