アリゾナで訓練に励む学生から、質問を頂きました。
ダウンウインドで強い上昇気流に持ち上げられてあっという間に100フィートもずれてしまいます。
対応を教官に聞くと、いつものターゲットピッチとターゲットパワーにセットして対処して下さいというアドバイスが返ってくるのですが、どう考えたらいいのですか?
この場合のターゲットピッチとターゲットパワーは、ダウンウインドで水平飛行ができる目安の値ですが、上昇流、あるいは下降流が全く無い条件下での話です。もう少し専門的に書きますと、速度ベクトルの鉛直成分がゼロという条件下での、ピッチとパワーの目安の値となります。
仮にどんな強い風が吹いていても(例えば100ktでも)その風向と風速が一定であって鉛直成分の成分が全く無ければターゲットピッチとターゲットパワーに合わせていれば目安の速度で水平飛行ができます。
逆に1ktの風が吹いていて500fpmの上昇気流がある場合は、ターゲットピッチとターゲットパワーに合わせていると500fpmで上昇してしまいます。
おわかりでしょうか。飛行機に示される風速は鉛直成分の風速は含まれていません。また、このように上昇気流、下降気流の話が取り上げられることもなかなか無いため、風の話をすると2次元の風の話にすり替えられてしまうのです。
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上図はCgatGPTに描いてもらった鉛直成分を含んだ風のイメージです。
そこで、最初の質問への答えですが、ダウンウインドを飛行していて強い上昇気流に遭遇した場合は、その上昇流に見合うよう降下のターゲットピッチとパワーにすべきです。
具体的には500fpmの上昇流であれば、無風時の-500fpmで降下出来るターゲットパワーとピッチにすれば、相殺されて水平飛行ができるのです。