ボールも突き詰めると奥が深いのですが、その種類について解説しましょう。
これまでの解説で徐々にわかって頂けたと思いますが、ボールは重力(旋回時は重力と遠心力の合力)の方向を単純に示しているシンプルな計器です。
今回はボールの種類について解説します。
写真のように丸い玉による表示とディスプレイの三角の底辺によるズレによる表示の2つに大別されます。
クラッシックな計器の計器板を取り除いたところです。
ボールが入っているチューブはこのような形になっているのが驚きです。
ガラスで出来ていると思いますが、組み立ての段階で一体ボールをいつの段階でこの中に入れたのかは謎です。
モダンな計器の拡大写真です。
冒頭に書きましたが、iBFDというアプリで正規の計器を再現したものです。
この写真は冒頭の写真の拡大図で4°傾けて撮影して頂きました。
△の下の長方形が左にずれていることで、ボールが左にずれている事を示します。(ズレの量については参考程度に見てください)
長方形の上下の幅の長さが3mmとしますと、3mm横にずれた時に4°傾いている表示というように決められているそうです。
このようにクラッシックなものとモダンなものは形は異なりますが、表示しようとしている内容は同じであると言えます。
ただし、モダンな計器では、何度の傾きがどれくらいの表示になるのかという正式な情報を探すのは困難です。
筆者が乗務したE170型機のオペーレーションマニュアルにもその情報はありませんでした。
誤解されやすいものとして、このモダンな計器があたかも横滑り角(β)を直接表示しているではという考えがあります。
これは明らかに誤解でありまして、クラッシックな計器と同様横滑り角は表示しません。筆者もE170型機の飛行前のプリフライトで、駐機場が僅かに傾いているときにこのようにずれを表示しているいることを覚えております。
仮に横滑りを直接表示しているとしたら地上では△の下がズレていることはあり得ませんので。
更に通常の航空機には横滑り角を直接表示する計器は残念ながらありません。
(グライダーに乗っている方は、計器を毛糸で代用されていると思います)
パイロットの方は是非一度プリフライトで観察してみて下さい。
おまけ
ボールとペアになっている旋回計の仕組みについては、下記のyoutubeの解説がとてもよく理解できました。
クラシックスタイルの旋回計の2種類の違いはこのビデオを見て、私も改めて(数十年ぶりに)知りました。
このブログの最初の写真の
左側の旋回計はYaw Rate とRoll Rate両方を指示します。
中央の旋回計はYaw Rateだけを指示します。
ビデオの中では6:35秒の時点でジャイロの軸の違いによる機能の違いが解説されていて大変興味深い内容になっています。
次回は双発機のお話しです。