その1では空中に静止していた飛行機ですが、今回は水平直線飛行していると仮定してみましょう。
最初に水平直線飛行のボールの位置ですが、言うまでもありませんね。
センターです。
なお、これからのお話しではプロペラ後流の要素は加えていません。
特に上昇時に顕著になるこの効果ですが、いつか解説することにしましょう。
次に左ラダーペダルをじわっと踏んでみましょう。
そうしますと、飛行機は左にヘディングを向けて左旋回を始めますが、それを阻止するように右エルロンを適量当てて(操縦桿を右に傾けて)スリップの飛行状態を作ります。
この状態は、「スリップしているが直進水平飛行している」と表現できます。
これはシリーズの後半で書きますが、着陸前のサイドスリップと同じ状態です。
この時、速度を維持するためにはスラストを増して、ピッチを上げないと維持できませんが、省略します。
さて、仮に左ラダーペダルを1cm踏み込んだ時、操縦桿を右に5度傾けて釣り合ったとします。この数字は説明のために適当に書いたものですので、ご理解下さい。
この時のバンク角がたまたま右2度になったとします。
安定したところでラダーペダルを踏み増します。
そしてヘディングが左に変更するのを抑えるように操縦桿を右にもう少し傾けてヘディングを一定にします。
これを繰り返して、バンクが4度になるようにラダー量(ラダーペダルを踏む量)を調整します。この時のラダー量は2cmであったとします。
落ち着いたところでボールを見てみましょう。
ボールは右に半分飛んでいるはずです。
さて、ボールを右に動かしているのは何の力でしょうか?
重力ですね。もう少し丁寧に書きますと重力の横方向の成分です。
Xplaneでイラストにして見てみましょう。
視点は飛行機の真後ろに移動しました。
重力の横方向の成分とは図の緑の矢印を指します。
次にボールが示している意味を考えてみましょう。
スリップしています。
解消するためにはセンターを示すまで右にラダーを踏んだ方がいいですよ。
わざと左に踏んでいるので、当たり前でしょうというツッコミが聞こえてきそうですが、おつきあいください。
ボールが示しているのは以下の2つであると考えられます。
1 現在のラダー量から右もしくは左のどちらに増やせばスリップが減るか = 傾向
2 どれくらい踏めばスリップがゼロになるか= 量
それではスリップを解消してみましょう。
そのためには現在のラダー量よりも右に踏み増します。
元々左に2cm踏んでいるので右に踏み増すということは、単純にニュートラルまで戻せばいいでしょう。
すると(当たり前なのですが)、水平直線飛行になり、ボールはセンターに戻ります。
スリップはゼロです
次にバンクとボールの推移をおさらいしてみましょう。
バンク0 ボールセンター スリップなし
↓
バンク右に4度 ボール右1つ スリップ多し
↓
バンク0 ボールセンター スリップなし
このように推移しました。
ボールはスリップの向きと量を示していると考えられます。
でもよく考えてみますと。別にボールがなくてもスカイポインターをよく見てバンクを0になるようにすればスリップが解消されると言えそうです。
確かにそうです。大雑把に言いますと水平直線飛行についてはボールは単純にバンク角を指示しているだけです。(多発機のエンジンが一発不作動で直線飛行を行っている場合は除外します)
実はスリップ量を直接表示する飛行計器は通常ありません。
(グライダーのパイロットでしたら毛糸を貼り付けてスリップ計にする技はご存じですね)
計器が無いため、スリップがゼロである状態は、水平直線飛行している条件ではバンク角がゼロでであると考えるしかないのです。
従って、多発機でエンジンが不作動でない限り、水平直線飛行についてはボールが活躍する場面は無いと言えます。
最後におさらいをします。
下の図は真ん中に水平直線飛行、左には左ラダーを踏んで水平直線飛行、右には右ラダーを踏んで水平直線飛行をしている状態を再現しています。
機体の姿勢とボールの関係をレビューしてみて下さい。
実はこの3つの関係は旋回中のボールの説明で再び登場することになります。
※ イラストはXplane11のFDRファイルを操作することによって飛行姿勢及び飛行計器を再現しています。
※ 水平直線飛行とは
上昇直線飛行でもなく、降下直線飛行でもない、高度を維持しながらトラックが真っ直ぐである飛行を意味しています。水平直線の水平という概念はバンクがゼロという意味ではありません。
その3では旋回中のボールとスリップについて考えてみましょう。