アプリ Flight Plannerでサークリングをプランする

これまで開発してきたアプリ:Flight Track Planner, PAPI, METARをひとまとめにして、さらにVFR クロスカントリー エンルート用ソフトを加えて、Flight Plannerとしてリリースしました。
開発に追われたため、使い方の説明も充分に行えず、まだ使いにくい点は沢山ありますがリリースいたします。

http://ito-lab.info:3838/FlightPlanner/

今回はこのアプリの中の「Visual Circling」タブをクリックし、衛星画像を選択する事によって現れる、ソフト(中身は従来のFlight Track Plannerです)を活用して小型機でのサークリングについて考えたいと思います。
滑走路は仙台RWY27 South Patternで模擬してみます。(実際にSouth Patternが多いのか不明ですが、説明のため設定してみました)

アプリの使い方は今後アプリ内に組み込む予定ですが、今回はこのアプリを駆使した結果を元に説明するという趣旨で解説してみましょう。


フライトの前提としてサークリングをプランするとして、速度(TAS)は分かり易く90kt一定と、Downwind幅は1nmにしています。
タイムチェックは20秒。
薄い青い円はスレッシュホールドから1.3nm(カテゴリーAの保護空域)を描いています。
シミュレートすると、13度バンク一定でドンピシャリ飛べそうです。
(注 このソフトは一瞬でバンクが確立できる想定なので、実際に13度バンクで回るとオーバーシュートします)

ちなみに青い円は下記のようにして描くことが出来ます。赤い歯車をクリックして下さい。


さて本題に戻りましょう。
時々、サークリングでは最初30度バンクを入れるべきだという考えを聞くことがありますが、筆者としてはあまり賛同できません。正確に書きますと状況によっては正しいのですが(オーバーシュートの風が強い、もしくはダウンウインドの幅が狭い)、頻度は多くなく、かえってそれ以外の状況では失敗する要因になるからです。
その状況を次に再現してみましょう。
1nmの幅で、無風時に30度バンクを入れた時の再現です。

30度バンクによってあっという間にベースヘディングまで旋回しますが、旋回終了の位置からでは超アンダーシュートになってしまい、結果としてベースレグを作らなければなりません。
この例では11秒飛んでみました。
その後ファイナルターンをします。
ターンを13度バンクで考えてみますと、ファイナルにアラインできるのは滑走路にごく近い地点になってしまいます。
冒頭のバンク一定の場合は海岸線を過ぎて間もなくアラインできたのですが、これとは大違いです。
つまり、オーバーシュートをせずに、ファイナルで大きなバンクをとらずに済むという目的で30度バンクを入れたために、かえってファイナルにアラインするのが低高度になって余裕が無くなっています。


さて、話題を元に戻しましょう。
赤いフライトトラックを見ると保護空域スレスレを飛行している事が気になるかもしれません。
また、視程が悪いことも想定してもう少し滑走路に近く飛行したいと思われる方もいると思います。
次は0.8nmのダウンウインド幅でシミュレートしてみます。

仮に一定のバンクで回りたいと考えた場合、計算上16度バンクくらいが良さそうです。
ただし、仮に筆者が飛ぶ場合、16度では回りません。操作遅れや精度、ロールレート等を考えて18度位で回ると思います。
下記は1度バンクを深めて17度の時の計算です。

さて、この0.8nmで回る時に最初30度バンクを入れる方法ですが、皆さんがご自分の手でアプリを操作して確かめてみて下さい。パイロットであれば左右のスライダーの意味はよくわかっていると思います。


次に15ktのオーバーシュートの風への対応をシミュレートしましょう。
このアプリは無風だけでは無く、風が吹いているときのシミュレーションが出来る事が強みなのです。

ダウンウインドでは9度のWCAをとって正確に飛行して、やや余裕を持たせるために21度のバンク一定で旋回出来ます。

この状況で最初に30度バンクを入れる方法を考えてみます。

無風の場合は
30度->0度(11秒)->13度でしたが、
30度->16度でアラインできました。
ただし、アライン出来る地点は海岸線を大きく越えた地点です。
そうしますとタイムチェックを20秒では無く、25秒くらいとればいいのではと思われると思います。

これ以降の解説は省略いたしますので、皆様、アプリを動かしてみて自分流の飛び方を探ってみて下さい。
さて、15ktの風で、21度バンク一定で回っているとき、空間に対してどのように飛行しているかを描いてみました。
このグラフは下記を選択すると現れます。


空間に対しては破線のように超アンダーシュートで飛びますが、15ktの横風に流されて、飛行機のシンボルが辿る実線のように飛行している状況を表しています。


このようにサークリングの横方向のナビゲーションには深い話が関係するのですが、この手の議論をしたり教育を受ける時に、大雑把すぎる話になる傾向があります。
先ほど取り上げた、旋回のバンクを30度にするか否かという話もその一つです。
結論として、シチェーションでは正解、その他ではリスクが多いという事がおわかり頂けたと思います。

操縦士として長く飛んでいると、不思議と色々な事が失敗を通じて見えてくるのですが、初学者は経験が乏しいためそのようには事が運びません。
その穴を埋めるためにこのツールで色々なシチェーションを疑似体験して経験積んでを頂きたと思います。
ある程度の科学的な根拠を元にフライトをする、これがパイロットとして求められる一つの資質ではないかと思います。

最後に、これまでの計算が果たして正しいのかという問いに対して、筆者自身が大学のFTDを使ってフライトを行い、検証をしてみました。
概ね計算通りになっていますので、興味のある方は下記の動画をご覧下さい。


以下おまけです
左上のタブで選択した滑走路のアイコンをクリックすると、最も最近のMETARを取得してアイコン上に表示する機能を組み込みました。
また、そのMETARの風向風速に応じた黄色い矢印を衛星画像上に表示しております。
つまり、現実に吹いている風をこのアプリに簡単にセットし、飛び方をプランすることが出来るのです。
ご活用下さい。